ふたり旅(公文健太郎 ✕ 山口誠)

東京 皇居外苑

『皇居外苑』の皇居前広場は、そこに訪れるたびに特別な空気を感じられる場所です。1949年に解放された国民公園で、黒松の点在する大芝生広場と江戸城の佇まいを残す濠、城門などの歴史的建造物とが調和し、総面積は約115ha。玉砂利と松しか存在しない広大な皇居前広場は、非常によくメンテナンスされることで保持されるテンションの高い空虚さと、そこに立ち並ぶ丸の内ビル群との対比が印象的です。

聞き手・構成|圓谷真唯

山口 東京駅側のまっ平で松がたくさん植えてある皇居外苑では、もともとエリア内の建物の高さは100尺つまり31mまでにしなさいという規制が定められていました。建物から皇居を覗けないよう高さが決められているので、同じ高さでビルが立ち並んでいるんですよね。そこに松がニョキニョキとランダムに生えているさまというのは、『浜離宮恩賜庭園』で見た光景のように、松とビルが並ぶことが同じように見えてくるのではないかと思ったんです。実際に行ってみると新しい開発によってビルの高さがまちまちになっていて、頭のなかのイメージは水平だったんですが、ちょっと違っていましたね。

そこで発見したのが白い石畳と黒い生垣だった。これはどういう流れで見つけたのですか?

公文 台風のあとだったこともあり、目まぐるしく雲が動いている状況に興奮して撮ったんですよ。光がとてもよかった。生垣の向こう側のビル群もおもしろいと思ったし、白黒のコントラストがなによりもかっこよかった。最近敷き詰めた綺麗な石と古い石の取り合わせも、直線と自然の曲線が混在していることも、奥行きが斜めにつぼんでいるのもよくて。スナップ的にいいなと思ったものには、無駄なものがあまり入っていないんですよね。

山口 最初に松を撮ったあと、二人で歩いていたときに公文さんが見つけてくれた風景でした。これは最高ですね。長方形に製材されている白くて新しい石と、不正形な古くて黒い石。道も石垣の側面も平らになっている。使われている素材が同じ石でも加工が違うわけですよね。それによってコントラストができている状態がすごいと感じました。肉眼でみたときの印象が切り取られている。写真を見て、よりいいなと思いました。

例えば道の写真もあるのですが、僕からするとこれはやや説明的すぎるのではないかと思っていて。画面の右2/3は新しい都市の風景、左1/3は江戸時代から続く風景で、隣り合っているといえば隣り合っているけど、ほかの情報がちょっと多すぎるので風景としては印象が弱まってしまうように感じました。

2021年10月27日